ベリーダンス教室を選ぶとき、いちばん大事なのは料金でも、駅からの近さでもありません。体験に行ったときに「ここなら通えそう」と体が緩むかどうかです。
私は30歳で運動経験ゼロからベリーダンスを始めて、今は50代の現役ベリーダンサー&インストラクターです。20年以上のあいだに、続く人と辞めてしまう人を、たくさん見てきました。分かれ道は才能ではありませんでした。教室と自分が合っていたかどうかです。
この記事では、大人になってから始める人が見ておくべき5つのチェックポイントと、体験レッスンで聞いていい質問をまとめます。
結論:値段より「体験したときの空気」で選ぶ
料金が安い教室を選んで続かなかった人も、少し高い教室で10年続いている人も、どちらも見てきました。金額と継続はあまり関係がありません。
代わりに効いてくるのが、教室の空気です。
体験に行くと、レッスン前後の数分に素の様子が出ます。生徒さん同士が話しているか。先生が一人ひとりに声をかけているか。初めて来た人(つまりあなた)に、誰かが目を合わせてくれるか。
ここで「なんとなく居心地が悪い」と感じたら、その勘はだいたい当たります。技術は後から身につきますが、居心地は変わりません。
とはいえ「空気」だけでは選びようがありませんよね。もう少し具体的に見ていきます。
その前に。ベリーダンス教室には3つのタイプがあります
教室選びでつまずく理由のひとつは、「教室」とひとことで言っても、中身がまるで違うことです。まずこの3つを知っておいてください。
① 大手スクール・スタジオのクラス制
鏡と床が整った専用スタジオで、初心者クラス・中級クラスと分かれているタイプです。同じ曜日の同じ時間に通います。設備が整っているぶん、月謝はいちばん高くなります。ホームページがあるので、探すのがいちばんかんたんです。
② サークル型の少人数レッスン
公民館や地域の集会室など、公共の施設を借りて開かれているものです。会場費が安いので、レッスン代も抑えられます。 初心者クラスという区分がない場合が多いです。月1〜2回のペースだったり、1回ずつの支払いだったりと、大人の生活に合わせやすいのが特徴です。人数が増えるほど一人あたりの金額が下がる方式をとっているところもあります。
※回数やレッスン料の支払い方法は、違う方法をとっているサークルもあります。
③ 個人レッスン(一対一)
先生と1対1で習うタイプです。日にちも時間も、お互いの予定を合わせて決めます。
私自身は、①の大手スタジオでレッスンを受け、今はクラス制のレッスンと、②サークル型③個人レッスンを教えています。だから正直に書きますが、どれがいいかは人によって変わります。「大きい教室のほうが安心」とも、「少人数のほうが優しい」とも言えません。
ひとつだけ目安を書いておきます。上手に踊れるようになって、大きな舞台で披露したい人は①です。設備も指導も、そこを目指す作りになっています。ただし、お金もそれなりにかかります。上達は目指しつつ、マイペースに楽しく踊りたい人は②③が向いています。どちらが上ということではなく、披露する場や通うペースが違うだけです。
この記事の5つの視点は、まず①を想定して書いています。②③だと事情が変わる項目もあるので、それぞれに書き添えました。
大人の初心者が見るべき5つのチェックポイント
初心者が一人で始められるか
いちばん大事なところです。
ベリーダンスは、腰を8の字に動かしたり、胸だけを上下させたりと、日常では使わない動きをします。経験者に混じったクラスに初日から入ると、周りに追いつくことで精一杯になって、自分の体を感じる余裕がなくなります。
①クラス制なら、まず「初心者クラスがあるか」を確認してください。
そのうえで、もうひとつ見てほしいのが、そのクラスが今も動いているかです。ホームページに書いてあっても、生徒が集まらず実質お休み中ということがあります。体験のときに「初心者クラスは今、何人くらいですか」と聞けばはっきりします。
そして、初心者クラスがあったとしても、そこにいる生徒さんは、始めた時期がそれぞれ違います。同じ「初心者」でも、できることは一人ひとり違います。
誰でも最初は初心者です。最初はできなくて当たり前ですから、周りと比べないでください。 これだけは、心構えとして覚えておいてほしいと思っています。
②③なら、少人数なので、初めての人も経験者も同じ場所で踊ることになります。ただ、たいていの教室は初めての人を歓迎してくれますから、身構えなくて大丈夫です。
年齢層が自分と離れすぎていないか
20代・30代ばかりのクラスに一人だけ50代・60代、という状況は、浮いてしまう可能性もあります。逆もそうです。
ただ、これは「同じ年齢の人がいないとダメ」という話ではありません。上下に幅があるクラスがいちばん居心地がいいというのが、私の実感です。私が教えているクラスでも、40代の人と60代半ばの人が一緒にレッスンを受けて、イベントでも並んで踊っています。年齢がばらけている教室は、体力も経験もばらばらなのが当たり前になっているので、できない自分を責めずにすみます。
体験に行けば、ひと目で分かります。
②③なら、この項目はあまり気にしなくて大丈夫です。人数が少なければ「同年代がいない」という状況そのものが起きにくく、個人レッスンなら関係ありません。
振替制度があるか
大人には仕事も家庭もあります。休まない前提の教室は、大人には向きません。
聞いてほしいのは次の3つです。
- 休んだ分を別の日に振り替えられるか
- 振り替えの期限はいつまでか(当月内なのか、翌月まで持ち越せるのか)
- 月謝制かチケット制か
振替がきかない月謝制の教室で、忙しい月に2回しか行けないと、「もったいない」がストレスに変わります。続けやすさは、この制度で半分決まります。
②③なら、ここはむしろ融通が利きます。1回ずつの支払いなら「行ける日に行く」で済みますし、個人レッスンは日程そのものを相談して決めるので、振替という考え方が要りません。忙しい時期がはっきりしている人は、この点だけで②③を選ぶ価値があります。
発表会は「出なくてもいい」か
ベリーダンス教室の多くには発表会があります。ここが大人の初心者にとって、いちばん分かれるところです。
発表会は楽しいものですし、目標があると上達も早くなります。でも衣装代やチケットのノルマがかかることもあり、始めたばかりの人には重荷になりがちです。
聞くべきなのは、出るか出ないかを自分で選べるか。「全員参加です」と言われたら、費用と時期まで確認してから決めてください。「出たい人が出ればいいですよ」と言われたら、その教室は大人が続けやすい教室だと思います。
②③にも、発表会やイベントはあります。 少人数だからないだろうと思われがちですが、あるところのほうが多いです。違うのは規模です。大型スクールのような大きな舞台や会場ではなく、小さな会場で開かれます。そしてその分、費用は安く済むことがほとんどです。
ですから②③を選ぶ人も、聞くことは同じです。出るか出ないかを自分で選べるか。そして費用はどれくらいか。この2つだけです。
先生との相性
最後は、いちばん言葉にしにくいところです。
見るべきは、上手さより教え方です。同じ動きを違う言い方で説明してくれるか。できていない人を放置しないか。できたときに、ちゃんと気づいて言葉にしてくれるか。
相性は、言葉にするのが難しいものです。でも、ひとつだけはっきり言えることがあります。自分がリラックスしてレッスンを受けられるかどうかです。大人になってから習う場合は、特にそう思います。
私が最初に入ったのは、渋谷のレストランショーで見て感動した、あのダンサーの教室でした。憧れそのものです。踊りはやっぱり素敵でした。ただ、レッスンはとても厳しい先生でした。
私は運動音痴で、覚えるのも遅い生徒でした。周りには私より上手な人がたくさんいます。ついていくだけで精一杯でした。
それでも辞めなかったのは、下手なりに踊るのが楽しかったからです。「好き」が勝ちました。 周りには途中でやめていく人もいましたが、いちばん遅かった私が、なぜか今も踊っています。
教える側になった今、私は生徒さんができなくても怒りませんし、イライラすることもありません。自分の性格がそうさせているのだと思います。「前の先生は怖かったけれど、ここではリラックスして受けられます」——そう言ってもらうことが、本当に多いです。
優しさを基本にしているのには、理由があります。大人になってから習うなら、上手さを追いかけるより、楽しんで踊ることのほうが先だと思っているからです。緊張しながら受けたレッスンは、楽しくありません。
だから体験レッスンで確かめてほしいのは、先生が厳しいか優しいかではありません。この人のレッスンなら、リラックスして受けられるか。そのことを自分の心と体に聴いてほしいです。
②③なら、この項目の重みがいちばん大きくなります。人数が少ないぶん、先生との距離がそのままレッスンの居心地になります。合わなかったときに紛れる場所もありません。
②は体験レッスンで確かめられます。③は体験を受け付けていない先生もいますが、個人レッスンはもともと、グループで習っていた人が追加で受けたり、日程が合わなくなって切り替えたりして始めることが多いです。すでに知っている先生なら、相性の心配はいりません。はじめから個人レッスンで習いたい場合は、体験ができるか聞いてみてください。受け付けている先生もいます。
5つのほかに、もうひとつ。一緒に習う仲間
続けてきて気づいたことがあります。相性は、先生とのあいだだけの話ではありません。
その後ご縁があって、ほかの先生にも習いました。先生ごとに教え方は違いますし、合う合わないもあります。それでも振り返ると、続けられた場所には、いつも一緒に習う仲間がいました。
上手い人がいる教室より、下手なまま居ていい教室のほうが続きます。それを作っているのは先生だけではなく、隣で踊っている人たちです。
そしてこれは、体験に行けばいちばんはっきり分かる部分でもあります。冒頭で「空気で選んでください」と書いたのは、このことでした。
同じ曜日に通えない人は、個人レッスンという手もあります
ここまで読んで、「そもそも毎週同じ時間には行けない」と思った人もいるかもしれません。シフト制の仕事、家族の予定、介護。大人には、曜日を固定できない事情がいくらでもあります。
そういう人には、個人レッスンが向いています。
日にちと時間を、お互いの予定で決められます。 「今月は第2週の午前、来月は夜」でも成り立ちます。1時間の人もいれば、2時間まとめて習う人もいます。週1回でなくても、月1回でも続きます。通えないから諦める、という理由が消えるのがいちばんの利点です。
もうひとつは、一対一だからこそできることです。動きを丁寧に見られます。 たとえば「腰が動かない」という悩みは、人によって原因が違います。膝の力の入れ方なのか、上半身が一緒に動いてしまっているのか。クラスの中では見つけにくいこの一点を、その場で見つけて直せます。遠回りが少ないぶん、少ない回数でも体が変わります。
「一対一だと仲間ができない」は、ちがいます
個人レッスンと聞くと、ひとりで黙々と習う姿を想像するかもしれません。でも実際は違います。
ハフラ(小さな発表会)やイベントに出るときは、ほかの生徒さんと一緒にリハーサルをして、一緒に練習します。そこで顔なじみになって、そのまま仲間として一緒に楽しんでいる人はたくさんいます。レッスンが一対一でも、仲間はできます。
逆に、イベントには出ないで体を動かすことだけを楽しみたい人は、個人レッスンだと、ほかの生徒さんと会う機会は少なくなります。
つまり、仲間ができるかどうかを決めているのは、レッスンの形ではありません。
大手スクールなら、発表会に参加しなくても、レッスンが複数人なので、友人や仲間はできると思います。そして発表会やイベントに参加すると、ひとつの作品を一緒に作り上げる時間を共有することになります。これはサークルでも個人レッスンでも変わりません。仲間としての絆が深まります。
ただし、発表会やイベントに参加しないと仲間ができない、ということではありません。大切なのは、自分が無理なく、楽しいと思える方法でレッスンを受けることです。
個人レッスンは、1回あたりの金額が少人数レッスンより高くなります。そのぶん見てもらえる密度が違うので、どちらが得かは人によります。
こう思います。毎週同じ時間に通えるなら①②。曜日を固定できない人や、自分の体をじっくり見てほしい人は③。 どれが良いというのではなく、通いやすいかどうかです。
体験レッスンで聞いていい質問・聞きにくい質問
体験レッスンの費用は、500円から1,500円くらいのところが多いです。ランチ1回分くらいで、その教室の空気がわかるなら、お得だと思います。
そして体験レッスンは、こちらが選ぶ場です。遠慮する必要はありません。
聞いていい質問
- 初心者クラスは今、何人くらいですか
- 振替はできますか。期限はいつまでですか
- 発表会は参加が必須ですか。だいたいの費用はどれくらいですか
- 最初に必要な物は何ですか
- 続けるかどうか、その場で決めなくても大丈夫ですか
このあたりは、聞かれ慣れている質問です。きちんと答えてくれるかどうか自体が、教室を見る材料になります。
ちなみに「最初に必要な物は何ですか」の答えは、教室によって少しずつ違います。私が講師として「これだけは最初にあるといい」と思う物は、「ベリーダンスのレッスン着は?初心者が最初に買う物はたった1つ」にまとめました。
聞きにくいけれど、聞いていい質問
- 途中でやめるときの手続きはどうなりますか
- 月謝以外にかかるお金はありますか
辞めるときの話を入会前にするのは気が引けますよね。必ず聞かなくてはいけないというわけではありません。でも、もし気になる場合は、確認しておくと安心ですよ。
逆に、聞かなくていいこと
「私の年齢でも大丈夫ですか」「体が硬いんですが大丈夫ですか」——この2つは、聞かなくて大丈夫です。答えはどの教室でも「大丈夫です」ですし、実際に大丈夫だからです。理由は前回の記事にまとめました。
講師から見た「長く続く人」の共通点
教える側から見ていると、長く続く人には、はっきりした共通点があります。上手い人ではありません。
休んでも、戻ってくる人。 大人には仕事があり、出産があり、家族の事情があります。一時的に休む生徒さんは多いです。でも、また戻ってきてくれる人も同じくらい多い。その人たちは、ベリーダンスが嫌いになって休んだわけではありません。好きなまま、休む理由があっただけです。だから戻ってこられます。
人と比べない人。 覚える速さにも、上達の早さにも差はあります。でも早く覚えることより、自分が楽しく踊れているかのほうが大切です。笑顔で踊っている人は、見ている側まで楽しい気持ちにさせます。それは、上手さだけでは得られない秘密兵器のようなものです。
上達を目的にしていない人。 発表会やイベントを目指す人ばかりではありません。純粋に踊る楽しさを味わいたくて来る人もいますし、「どうせ運動するなら楽しくやりたい」という人もいます。目的が「楽しむこと」なら、毎回のレッスンで達成できてしまうので、辞める理由が生まれません。
つまり、教室を選ぶときに本当に見ておくべきなのは、「久しぶりです」と言って戻れる場所かどうかなのかもしれません。
まとめ:「ここで習いたい」と思えたら、1つでも決めていい
最後にひとつだけ。体験は、1回でも大丈夫です。
「何軒か回って比べないと失敗する」と思わなくていいです。行ってみて「ここで習いたい」と思えたなら、その気持ちがいちばん確かな判断材料です。冒頭に書いた「体が緩むかどうか」は、1つ目で分かることもあります。
もちろん、いくつか見てから決めたい人はそうしてください。何軒見るかは人それぞれで、正解はありません。 迷いが残ったときだけ、もう1つ見に行けばいいのです。
あとは予約するだけです。行ってみて違ったら、やめていいのです。
私は30歳のとき、運動音痴で覚えの悪い、いちばん下手な生徒でした。それでも20年以上、踊っています。
教えてもらう立場から、教える立場に変わった今でも思うのは、ベリーダンスを長く続けてこられたのは、上手くなったからということよりも、好きだったから。これが一番の理由です。
あなたにも、ベリーダンスを楽しく続けられる場所が見つかりますように。



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